レッスルエンジェルス・サバイバー リプレイ

[♪れすにっき♪]捲土重来

 さて、4年め10月。奪取以来6ヶ月間ベルトを保持し続けているTWWAタッグ王者ちづる様&斉藤組。この防衛戦の挑戦者に日本人タッグをぶつけるのが日本人選手によるタイトルマッチの第二段。その挑戦者チームに私は霧島&近藤タッグを選んだ。
 しかしこれに反対したのは当の霧島さんだった。
霧島「この人選は疑問です。実力的に挑戦権があるとは思えません」
KOSHINIKI社長「どうしてですか? 近藤はTWWAヘビー王者だし、EWAタッグも持っているし、十分だと思いますけど」
霧島「そのタッグパートナーのことを言っているんです」

 霧島さんは評価値が下がり続けすでに700台にまで落ち込んでいた。このカードの中で一番近い斉藤とも200の差がある。

霧島「そんな選手がもしもベルトを取ってしまったら、ベルト自体の価値が下がり今後の興行で行われる選手権試合の集客にも悪い影響が出ます」
KOSHINIKI社長「…霧島さん。タッグで重要なのは、個人の強さだけじゃないんですよ」
霧島「…選手でもないあなたに改めて言われるまでもありません(カチン)」
KOSHINIKI社長「だったら、タッグでの戦い方というものを他の若い選手たちにも教えてあげてくださいよ。あなた自らの力でね」
霧島「挑発としては安い部類に入りますが、そう言われては引き下がるわけには行きませんね。指揮は、私の得意分野ですよ」
KOSHINIKI社長「頼もしいですね」

 霧島さんは会話を打ち切るようにきびすを返した。そして、肩越しに投げつけるように言った。

霧島「…作戦名・グロリアスリング。見せてさしあげますよ、本物の用兵というものを」
 霧島さんが出て行った後、秘書の井上さんが小声で言った。
井上「…いいんでしょうか? 言いにくいことですが、霧島さんの心配はもっともなことかと」
KOSHINIKI社長「うん…でも、霧島さんの選手生命はもう長くない。いや、最初から長くなかったんだ。その短い期間、霧島さんは選手とコーチ、二束のわらじで…これが、我が社のできる霧島さんへのせめてものお礼だよ」
井上「…」

 このとき、私も井上さんも、王座移動なんて本気で信じていなかった。
 しかし霧島さんは近藤を巧みに用兵で操りきってしまった。"打"カードが来れば近藤が台風のような勢いで暴れまわり、"パ"が来れば霧島さんがピンポイントでパワー技を決める。

永原「斉藤さーん!!」
近藤「させるかっ!!」

 斉藤のピンチに介入しようとしたちづる様に近藤がニーリフトをかます

近藤「決めてください霧島さん!!」
霧島「これで決まりだっ!!」
 轟音とともに揺れる四囲のロープ。STKで叩きつけられた斉藤は立ち上がることは出来なかった。ついに斉藤から霧島さん自身の手でKO勝ちを奪ったのである。
 試合後の、リング上でのベルトの授与式に私も参加した。霧島さんは私の近くに来ると小声でこうささやき、ウィンクする。「どうでしたか、私の指揮は?」
 いやはや、おみそれいたしました霧島さん。