やっとまともに見られました

[貧乏姉妹物語]

 バレンタインデーに、きょうのためにチョコレートを作ったあす。きょうの通う中学校まで届けに行くが、そこできょうが男子生徒にチョコレートを渡しているところを目撃してしまう。きょうが好きになった男がどういう人柄かを確かめようと後をつけるあす。しかしごみは正しく分別し財布は交番に届け老人の荷物を持ってやるなど完璧な善人な男子。先に家に帰っていたきょうは、渡すタイミングを失い隠しておいたあすのチョコレートを見つける。チョコのことを突っ込まれたきょうは「おねえちゃんは私のチョコなんかいらないんでしょ!」と叫んで家を飛び出してしまう。あてどなくさまようあすは、件の男子がほかの女の子を連れて歩いているところをみつける。ちょうどそこにあすを探しにきたきょうが鉢合わせしそうになる。とっさに肉まんの安売りと嘘をついてその場をごまかすあすだが、本当に安売りしていたコンビニで結局男子と出会ってしまう。慌てるあすをよそにその光景を見て喜ぶきょう。あすが目撃した場面は、実は男子が連れていた女の子の代役できょうがチョコを渡していたところだったのだ。誤解が解け安心するあすに、きょうは優しく告げる。「たとえ私に好きな人ができても、あすを悲しませるようなことは絶対しないよ」

 あざとい、あざといといわれ続けていますが、私はこーゆーの好きですね、はい。普通の家庭だったら姉妹に恋人ができても応援したり冷やかしたりするでしょう。でもあすにとってきょうは人生のパートナーであり自分の半身にもひとしい人間であるわけで。濃密で長い時間をともにすごし、それぞれ別の価値観を持つ別の人間だということすら忘れているのに、突然そのことに気づかされる。幼い子供にとっては裏切りと感じても仕方ないでしょう。そしてそんな真実を突きつけられるにはあすはまだ幼すぎる。本来はまだ円満な家庭で甘くやさしい環境に包まれて育つべき年齢でしょう。今回のエピソードは、できすぎているあすの本来の精神年齢を象徴するいい話だと思いました。